初心者のための痩身ガイド
要するに人それぞれの価値観の中で、どの部分に手をかけるのか、そのポイントをしっかり持つ、優先順位を決めるということが大切なのではないだろうか。
地に足のついた暮らし。
その中にあるめりはり。
自然志向の手のかけ方。
幾つになっても異性を意識するといった"社会性としての女らしさ"を保っていることイタリアマダムがそれぞれにスタイルある生き方を持ち、はつらつとした魅力をもっていると感じられるわけは、その人の人生を流れる水脈の、たっぷりとした豊かさからくるものなのである。
イタリア人のおしゃれの根本にあるものは「自分らしくありたい」という強い思いである私っていったいどういう存在なのか、私はどう生き、何をしたいのかそのことを常に考え、自分の内面と正直に向き合っていくことの中に、おしゃれU「外見をどのように表現するか」ということも含まれる。
自分とは何かを知ることは、そうたやすいことではない。
人はなかなか冷静に、自分を客観的な目で見ることができないからだ。
「自分らしさ」をどうやって見つけ、育てていくことができるか。
「おしゃれ」というと、ただ漠然とした感覚的なもののように思われがちだが、そうではない。
そこにはまず自分という花がある。
地上に花開かせる手段がおしゃれだと自分という花をどう咲かせるか自分という花の、色、かたち、匂いを知るために最も早く確実な方法は、第一に自分言えるだろう。
自分をなかなか好きになれず、短所ばかりを気にしていた私は、ある日、自分の良いと思えるところを紙に書き出していった。
すると今まで見えなかった"私自身の姿″が、おぼろげながらはっきりしてきたのである。
自分を知り、自分を好きになるひとつのきっかけとなった。
私がイタリア人から学んだ最も大切なことのひとつだった。
彼らは自分が好きなのだ。
自分のことが、暮らすことが、生きることが大好きなのだ。
だからこそ暮らしを楽しむことに長け、自分を演出する術をたくさんもっているのである。
「欠点のことばかり気にしていたって始まらないじゃない?」と、私はあるミラネーゼの女性に言われたことがある。
欠点より長所よ、いいところばかり数えるの、そこを思い切りアピールするのよ、そうすると欠点だと思っていたところがいつの間にか気にならなくなる。
ヨ−ロッパの人々は男も女も見せ場を意識して生きている。
街もカフェも家の中でも、行くところすべてが彼らにとっての劇場である。
"オープンカフェ"のように形だけ輸入しても所詮意味がない。
自分なりの"見せ場″をどこにつくるか。
仕事なのか家庭にいるときなのか、男友達と会うときか、それとも。
生活の中により多くのステージを持っている人ほど磨かれていくのではないだろうか。
イタリアで、おしゃれの中心的存在は三十代以降の女性たちである。
三十ニ歳でこの地にわたったとき、知ってまず思ったのは「歳をとるって、何て楽しみなことなのだろう」ということだった。
た。
嬉しかった。
日本にいたら一生気づかないことだっただろう。
生まれ直したような思いがした。
三十代からは、おしゃれが本格的に面白くなっていく時代である。
赤やピンクといった甘い色、リボンやフリル、水玉や花柄、絹やシフォン、カシミアといった上等な素材されるものとされている。
若いうちは勉強の時、修業の時代だから質素で地味でいい、人間的にも女としても、成熟して初めて華やかであることが社会の中で求められるのである。
街の通りで、トラム(市電)の中で、私は何度振り返ったことだろう。
白髪のマダムが、淡いベージュ色のニットスーッに同じ色のヌバックのパンプスをはいて向こうからやってくる。
肩には、澄んだ美しいピンクの大きなストールをゆったりとまとい、歩くたびに春の日射しのように、柔らかく揺れている。
すれ違うときに思わず見ると、胸元にはストールと同じピンク色の細い珊瑚のネックレス。
大輪の芙蓉のようなその姿を今でも忘れることができない。
自分という花をどんな舞台に咲かせるか。
そのための"衣装″としておしゃれがある。
ここではそうした発想から生まれた三十項目の具体的な方法をあげてみたい。
ミラノのモンテナポレオーネ通りに、"カフェコーバ"という名のティールームがある。
ミラノで一番古く、ナポレオン時代の社交場であったというこの店に、午後三時ごろ立ち寄るのが好きだった。
というのは、この時間になると、暇とお金のある優雅なマダムたちが連れだってお茶を飲みにやってくるからである。
彼女たちのファッションの華やかさに圧倒されながら、私はしっかり観察したものだった。
厚地のテーラードカラーのジャケットを素肌に直接着たりする。
襟元には、大きめのブローチ。
髪はきっちりと後ろにひとつにまとめて、そこにベルベットの黒い花の髪飾りや、リボン形の髪留めをつけている。
日本では年配の女性が、そんな華やかなタイプの髪飾りをつけているのをあまり見たことがないので、最初は少々驚いたが、留める位置を低くして色や素材をシックなものにすれば、決しておかしくないのだと教えられた。
もっと印象的だったのは、そんなマダムたちのほとんどがパールのネックレスをしていたことだった。
パールは日本の女性も最も好む宝石とされているが、イタリアへ来てみて、いやいや、日本以上だとつくづく思った道行く人々の襟元を注意して見ていると実にパールが多い。
それも、一連のシンプルなものは少なく、たいていは二連か三連。
しかも"クラスプ"と呼ばれる留め金の部分を前にしてつけている人がほとんどである。
イタリアでは伝統的に、このクラスプという留め金が発達している。
単に留めるためだけではなく、さまざまなデザインのものがあり、中央あるいは少し横にもってきてつける宝石店に行くとクラスプだけが何十個と用意され、好きなデザインのものを選ぶこともできる。
ゴールドに小さなダイヤを埋めこんだもの、星やリボンの形をしたものなど、パールに異素材のクラスプをつけることで、より華やかさと凝った美しさが出せるのである。
ある貴族のマダムは、家に代々伝わる珊瑚のブローチをリフォームしてクラスプにしていた。
パールの白と珊瑚の濃い紅色の組みあわせが見事なコンビネーションだった。
このようなゴージャスなパールのつけ方をするのはマダムがほとんどで、若い人はしない。
この国の女性のアクセサリーづかいにはきっちりした段階がある。
十代の頃、まず細いゴールドのブレスレットやピアスをつけ始める。
誕生日やクリスマスに親から贈られたものであることが多い。
ニ十代から三十代の間には、しっかりしたつくりのゴールドのネックレスを手に入れる。
四十代以降になると、華やかなニ連、三連のパールをつけるようになる。
この、世代によって段階を踏んでいくという伝統はアクセサリーに限ったことではなく、すべてのファッションに共通の基準になっている。
おしゃれを成熟したものにしているのだ。
若いときは、肌も顔立ちも、そのままで充分瑞々しい。
だから宝石で"輝き″を与える必要はない。
反対に肌が枯れ、その代わり内面の深みが顔に表れた大人の年代にこそ、パールのとろりと甘く、まるやか白の輝きが似合う。
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